年金分割
1. 年金分割とは
よく誤解されている方がいらっしゃいますが、年金分割とは、「将来、受給する年金の半分を、離婚する相手方にわたす」というものではありません。
年金分割とは、公的年金制度の2階建て部分(厚生年金保険や共済年金部分)の年金額の算定の基礎となる標準報酬(給与及び賞与額の平均額に、一定の係数と被保険者であった期間(月数)を乗じて算出したもの)等を、離婚後、夫妻同じくすることができるものです。
一言でいうと、年金分割とは、「年金保険料の納付記録の書換え」のことです。これにより、厚生年金に入っていなかった配偶者は、将来、年金分割に応じた年金を受け取ることができ、老後の生活が保障されることになります。
2. 年金分割を行う方法
年金分割は、厚生労働大臣に請求することによって行います。
原則として、当事者間で分割の割合について合意がされることが必要です(いわゆる3号分割というものがありますが、今回は割愛します)。合意が成立しない場合は、家庭裁判所で分割の割合を定めます。
厚生労働大臣への請求の期限は、離婚成立日の翌日から数えて、2年以内です。
財産分与が、別居時点の財産を分け合う手続きであることと異なり、年金分割は別居時点までではなく、婚姻の全ての期間が対象になります(別居までではなく、別居してから離婚成立までの期間も含み、対象となります)
年金分割の按分割合は、0.5ずつとなる事が多く、按分割合を修正した裁判例はありますが、例外的なケースです。
令和元年8月21日大阪高等裁判所決定では、同居期間約9年、別居期間約35年というケースでも、年金分割の按分割合は0.5ずつと判断されています。
年金分割の按分割合は、争うことが難しいといえるでしょう。