有責配偶者からの離婚請求(東京高裁平成9年11月19日判決)
弁護士 幡野真弥
東京高裁平成9年11月19日判決をご紹介します。
事案の概要は以下のとおりです。
・XとYは、昭和53年に婚姻し、約6年間共同生活を送り、その間に子2名(裁判当時は高校三年生と中学二年生)を得たが、Xは、他の女性と親密になってYと別居し、その後、裁判まで約13年間別居生活を続けた。
・Xは会社に勤務して月額約80万円を得ているほか、相当額の賞与を得ているが、Yには毎月25万円を送金するのみであり、Yはそれから家賃負担を控除すると残額は10万円に満たず、実家から月額20数万円の援助を受けている。
裁判所は、Xが有責配偶者であり、未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって請求を排斥すべきではなく、その有責性の程度、婚姻関係の継続への努力の程度、相手方配偶者の婚姻継続についての意思、離婚を認めた場合の相手方配偶者や未成熟の子に与える精神的・経済的影響の程度、未成熟子が成熟に至るまでに要する期間の長短、現在における当事者、殊に有責配偶者が置かれている生活環境等諸般の事情を総合考慮して、その請求を信義誠実の原則に反するとはいえないときは、その請求を認容することができると解すべきであるが、本件においては、Xの有責性の程度、婚姻関係の維持への努力の欠如、未成熟の子供が成熟に至るまでに要する期間を総合考慮すると、Xからの離婚請求は、未成熟の二人の子供達を残す現段階においては、いまだなお、信義誠実の原則に照らし、これを認容することはできないと判断しました。