コラム

離婚訴訟 離婚原因 裁判例

モラハラの主張が認められなかった裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成29年11月 6日判決をご紹介します。
 原告が、元夫である被告に対して、離婚の原因は、被告の度重なるモラルハラスメントにあると主張して、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料300万円の支払いを求めました。
 原告は、被告と別居した後に、医師から「被告との長期間にわたる葛藤があり,精神的なストレス状態となっている。」として急性抑うつ反応と診断され、別の医師からは「被告から受けた長期複数回にわたる精神的暴力と威嚇行為が本疾患の成因である。」として、重度ストレス反応及び適応障害と診断されていました。
 被告はモラハラについて争い、また精神的暴力や威嚇行為の事実は認められなかったところ、裁判所は「原告は,自身の繊細な性格が原因で,義母や被告の言動を過剰に感受して精神状態が不安定となり,心因性の体調不良を引き起こし,そのことから生ずる被告との衝突が更に原告の精神状態の不安定を招くという悪循環に陥っていたものとみるのが相当である。
 原告がモラルハラスメントである旨主張する被告の言動は,原告に対する思いやりが不十分であったというべき部分があるとしても,一般的に婚姻関係の継続を困難にさせる程度のものであるとまではいい難く,本件全証拠によっても,上記診断書に記載されたような「長期複数回にわたる精神的暴力と威嚇行為」があったとまでは認められない。」等と判断し、別居・離婚となったことついては、「原告の性格とそれに対する被告の対応の双方に原因があるというべきであり,原告が主張するようにその原因が被告の一方的な有責行為にあると認めることはできない。」と判断しました。