婚姻費用分担金の支払いを受けながら当面別居することになった事例
事案の概要
お客様は、夫の不貞行為が発覚したり、その他にも夫が嘘をついていたことが発覚し、一度はご自身で、発覚している事実を夫に伝え、反省を求めました。しかし、残念ながら夫の生活状況につき、改善される様子がなく、夫のことを全く信用することができなくなり、離婚を強く希望するようになりました。しかし、お客様は、結婚後は専業主婦をしており、特別な資格を持っているわけでもなかったため、経済的に自立することが容易ではなく、離婚後の生活にご不安が大きかったので、進め方に迷われて、当事務所に相談にいらっしゃいました。
結論
当事務所が妻の代理人として、婚姻費用分担調停、及び夫婦関係調整調停(離婚)を申し立て、調停にて話し合いをした結果、婚姻費用分担調停にて適正額+αの金額にて合意することができ、離婚調停は不成立として終了しました。
当事務所にてお客様よりお話を伺うと、離婚のご希望はもちろんあるものの、離婚後の生活の目途が立っていませんでした。
お客様ご夫婦の間にはお子様はいらっしゃるのですが、成人しておられ、離婚後は養育費等の支払いはなされないため、離婚すると、夫からの生活費の支払い等は一切受けられない状況でした。加えて、専業主婦歴が長く、特別な資格もない状況でしたので、就職活動も難航しており、パートで雇ってもらえる会社がやっと見つかったというような状態でした。
このような状態だったため、お客様の将来の経済的な不安も非常に大きかったです。他方で、お客様としては、現状では、別居ができれば離婚までは必須ではないという状況でした。
そこで、お客様と相談の上、経済的不安を取り除けるかどうかを重視して、夫との話し合いに臨むことにしました。具体的には、夫から財産分与等について適正額以上に有利な金額の提案が出てくるのであれば、現状で離婚も検討するが、それがなされないようであれば、まずは婚姻費用分担金の取り決めをして、お客様が就職し、経済的な安定を確保することを優先するということになりました。
調停で話し合った結果、夫からお客様が満足のいくような条件は提示されず、他方で婚姻費用分担金については適正額+αの金額で合意することができました。双方とも一旦、離婚の話し合いは中断で良いということになり、離婚調停は不成立で終了となりました。
お客様の後日談によると、その後、別居により夫と適切な距離ができたため、同居時より良い関係が築けているということで、このまま離婚しないということでも良いかもしれないとおっしゃっていました。
本件は、夫の不貞行為の証拠等が存在しており、事実上、夫は妻の合意がなければ、すぐに離婚できない状況であったこともあり、上記のように、当面の間、別居して婚姻費用をもらい続けるという方針が実現可能だった側面があります。
妻が、特に働いていなかったり、特別な資格もないという状況ですと、離婚後の生活をどのように成り立たせるかということについて、慎重な検討を要します。未成熟氏がいる場合は、さらに複雑な検討を要する場合もあります。
ご自身の希望、お子様の状況、離婚原因の有無など様々な要素から取りうる方針がそれぞれに異なります。特に将来の生活にご不安がある場合は本件のお客様のように、ご自身で夫と離婚協議を始める前に、一度、専門家に相談することをお勧めします。
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