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離婚後の氏と戸籍

弁護士 幡野真弥

 現在、選択的夫婦別姓制度についての議論が盛んです。将来、法改正があるかもしれませんが、現行の法律では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する。」と、夫婦同氏の原則を定めています(民法750条)。そして、夫婦はそのいずれか一方の婚姻前の氏を選び、その選んだ氏を婚姻届に記載しなければなりません(戸籍法74条)。婚姻届により、夫婦の新戸籍が編成され、氏が選択された者が戸籍筆頭者となります。

 離婚すると、婚姻の際に氏を改めた配偶者は、婚姻前の氏に戻ります(民法767条1項)。戸籍も婚姻前の親の戸籍に原則的には戻りますが、新しく戸籍を編成することができます。実際には新しく戸籍を編成する方が多いです。
 また、離婚の日から3ヶ月以内であれば、届出により、婚姻中の氏を継続して使用することができます(民法767条2項)。これを、婚氏続称といいます。婚氏続称をした場合は、親の戸籍に戻ることはできず、必ず新しい戸籍を編成することとなります。
 一旦、婚氏続称の届出をした後、やはり婚姻前の氏への変更を求めるという場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります(戸籍107条1項)。法律上、「やむを得ない事由」が認められる必要がありますが、柔軟に認められているようです。

 子供がいる場合、離婚によって、子供の氏と戸籍には変更がありません。
 そこで、子供の氏と戸籍を、離婚によって氏が変わる親と同じものにしたいときは、 離婚によって氏が変わる親 は、新しい戸籍を作り、その戸籍に子供を移すこととなります。手続きとしては、家庭裁判所から子の氏の変更の許可を受けて、戸籍の届け出をします。 婚氏続称をするときであっても、子の氏の変更の許可を受ける必要があることに変わりはありません。