事業収入と給与収入の両方がある場合②
弁護士 長島功
婚姻費用や養育費の算定にあたって、当事者に事業収入と給与収入の両方がある場合、収入をどう認定するのかについて、今回も解説します。こういった場合、給与所得額と事業所得額の一方を他方に換算し、合算した額を算定の基礎となる収入とするのですが、前回は給与収入を事業収入に換算する方法について解説しました(事業収入と給与収入の両方がある場合)。
そこで、今回は逆の「事業収入を給与収入に換算」する方法について解説します。
まず、確定申告書の所得金額欄の事業所得の数字をみます。そして、この数字に、現実には支払われていない控除額(専従者給与(控除)額の合計額及び青色申告特別控除額)を合算した金額を加えます。
仮に事業所得が300万円、現実には支払われていない税務上の控除額の合計が70万円の場合は、合計370万円となるため、これに相当する給与収入額を算定表の縦軸で探すと、自営欄373万円が近い金額なので、それに相当する給与収入は500万円であることが分かります。
そこで、この給与収入に換算した500万円と、確定申告書の給与収入欄に記載された金額(仮に600万円とする)を合算した1100万円が、この方の算定の基礎となる給与収入ということになります。
なお、以前の解説でも記載したとおり、この事業収入を給与収入に換算する場合も、確定申告書の社会保険料の数字は、既に給与収入で源泉徴収されていると考えられるため、同じく考慮しないとされています。