別居時、共有財産を持ち出した場合の婚姻費用
弁護士 長島功
婚姻費用を算定するにあたっては、双方の収入を基本に様々な事情が考慮されて、金額が算定されますが、別居にあたって、配偶者が共有財産である預金等を持ち出した場合、他方配偶者より婚姻費用の減額や既払いの主張がされることがあります。
そこで今回は、このような共有財産の持ち出しが婚姻費用で考慮されるのかについて、解説致します。
この問題については、結論から言いますと原則として考慮はされません。
婚姻費用は、あくまで双方の継続的収入に基づいて算定されるものですし、その中から支払われることが想定されているものです。こういった持ち出しのケースではなく、単に一方配偶者が多額の共有財産を管理しているような場合であっても、それが婚姻費用の算定で考慮されないのと同じです。
また、仮にこれが考慮要素になってしまうと、収入だけではなく、保有資産まで婚姻費用の審理対象となってしまい、その額はもちろん、それが共有財産なのかということにまで争点が拡大しかねません。これは婚姻費用は迅速に取り決めなければならないという要請にも反することになってしまいます。
したがって、権利者が持ち出しをし、同人に保有させて消費可能な状態においたまま、さらに義務者に婚姻費用の支払いを命じることが酷といえるような例外的な場合は別として、基本的には、別居にあたり、共有財産の持ち出しがなされ、その管理に変更が生じたとしても、婚姻費用では考慮されず、離婚時の財産分与で処理されることになります。