コラム

婚姻費用分担金

婚姻費用分担請求について㉖~婚姻費用分担額決定までの流れ(16)調停と審判~

弁護士 小島梓

 これまでご説明してきたように、調停にて当事者が婚姻費用分担額について合意をして成立となるか、不成立となって審判手続きに移行するかという流れになるわけですが、成立させるか不成立として審判に移行するかという段階で何を考慮して、どのように決断したらよいのでしょうか?

 今回は調停と審判のまとめも兼ねて、簡単にこの点をご説明したいと思います。調停と審判の違いなどから、調停の主なメリットは以下のような点にあると考えられます。

ア 当事者双方が合意した結論となるので、不払い後の紛争が起きにくい
イ 内容について柔軟に対応できる
ウ 早期解決が図れる

<ア 当事者双方が合意した結論となるので、不払いや後の紛争が起きにくい>
 繰り返しになりますが、調停は当事者双方が金額等について合意した場合に成立します。双方大満足となることは少ないですが、双方とも一定の譲歩を経て納得をして終了となりますので、決められたことを守らないなどのトラブルが発生しにくいです。

<イ 内容について柔軟に対応できる>
 審判になりますと、基本的に裁判官は婚姻費用の月額や未払い額を決めるだけということになります。しかし、調停の場合は、子供の費用の関係など、双方が合意さえすれば柔軟な取り決めも可能です。

<ウ 早期解決が図れる>
 調停は、成立後に不服申立制度もありませんので、成立したら、基本的にそこで金額も決まって終了です。審判に比べると、早期に解決が図れる、ゆえに、双方とも手続きにかかる費用も低額で済むというのも非常に大きなメリットです。

 不成立として審判に移行するか否かを検討するときには、基本的に上記のような調停のメリットを考慮してもそれを上回る利益があるかどうかという視点を持つことが重要かと思います。

 一番わかりやすいのは、相手方が不合理な理由ばかり述べ、法的に認められうる婚姻費用額とはかけ離れた金額しか提案してこないなどの場合です。この場合は、金額が低すぎては早期解決の意味もなく、他方で審判に移行し裁判官に判断を仰ぐことで法的な適正額を出してもらえる可能性が高いので、移行するメリットがあるということになろうかと思います。

 逆に、自分としては納得ができないが、相手方は法的な適正額に近いと思われる金額を提案してきている場合などは、結局、審判に移行しても、相手方からの提案額以上の金額は出ない可能性があるので、時間がかかることを覚悟で審判移行するか否か慎重に判断する必要があります。

 このように、審判移行するか否か判断をする際には、調停のメリットと、審判に移行した場合に金額が変わる可能性がどの程度あるのか法的な観点から検証することが重要と考えます。