コラム

婚姻費用分担金

婚姻費用分担請求について⑨~婚姻費用分担額の算定(2)~

弁護士 小島梓

 今回は、具体的な事例を用いて、婚姻費用算定表の見方を説明いたします。
(例)現在妻と夫は別居中で、妻が子供二人(15歳、11歳)と一緒に生活をして、監護養育している。妻の給与年収200万円、夫の給与年収800万円です。
 この場合、算定表をどのように見ていけば適正額が分かるのでしょうか。

 まずは、「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」をご覧ください。裁判所では子供の人数と、年齢に応じて算定表が用意されています。

 本件具体例では、15歳以上の子供が1人、0歳から14歳の子供が1人という状況ですので、まず、「(表14)婚姻費用・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)」が使用すべき表ということになります。
 なお、養育費と婚姻費用とでは子供の年齢、人数が同じでも見るべき表が違いますので注意してください。

 表14を見ますと、縦軸が義務者の年収、横軸が権利者の年収ということになっています。婚姻費用の支払い義務者は通常は収入の多い夫、権利者は妻ということになります。
 そして、本件で夫の年収は800万円ですので、まず縦軸について給与800万円の箇所を見ます。妻の年収は200万円ですので横軸について給与200万円の箇所を見ます。
 自営業の方は給与の軸ではなく「自営」と書かれた軸をみます。

 この給与800万円と給与200万円がぶつかる箇所を見ていくと月額16万円から18万円のゾーンに入ることが分かります。結果、この表から、本件で、夫から妻に支払うべき婚姻費用適正額は、月額16万円から18万円ということになります。

 では、これが具体的にどのように用いられるかということについてです。
 婚姻費用分担調停の申し立てを行い、裁判所で話し合いを行うことになった場合には、基本的に、この算定表を用いて算出した適正額をベースに話し合いが行われることになります。
 そのため、当事者間の話し合いにおいても、自分たちの場合、算定表上ではどの程度の金額になりそうかということを意識していただくと良いと思います。
 なお、婚姻費用分担金決定までの流れ、とるべき手段については、当事務所の意見も踏まえて別コラムで詳細をご説明します。

 以上では本件具体例に即して簡単にご説明しましたが、表の見方の詳細については「養育費・婚姻費用算定表について(説明)」も併せてご覧ください。

 では、算定表にはないパターンの場合、例えば、子供が4人いる、夫と前妻との間に子供が一人いて、夫はその子のための養育費を支払っている、夫の収入が2000万円以上の高額であるというような例外的な場合はどうするのでしょうか。
 次回は、算定表では算定できない例外的な場合についてご説明します。