婚姻費用分担請求について②~婚姻費用(生活費)分担義務の根拠~
弁護士 小島梓
「婚姻費用分担請求について①~婚姻費用とは~」のコラムの中で、婚姻費用についてごく簡単にご紹介しました。
離婚を考えるにあたり、別居期間の費用については大変重要な問題になりますので、本コラムで、婚姻費用分担請求の基礎、中身、請求方法などについてより詳細にご説明をしていきたいと思います。まずは、婚姻費用分担請求の根拠について簡単にご説明します。
民法760条において夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担すると定めており、ゆえに、夫婦の一方がその分担義務を果たさない場合には、他方は婚姻費用の分担請求権を有することになります。
上記のとおり、夫婦の一方が分担義務を果たさないときに、問題が顕在化しますので、基本的に同居中に問題となることはなく、通常は、離婚をしないまま、別居状態となった後に問題となります。
問題となる典型的なケースは、別居後に妻が生活費の請求をしても、夫が妻や子供の生活費を負担しないというケースです。このような場合、妻は婚姻費用分担請求権に基づき、夫に対していわゆる生活費の請求を行うことになります。
「夫と別居したいが、その後の生活費はどうしたらいいのか」「夫と別居して、夫に生活費を払ってほしいと伝えたが、一切払ってもらえない。」というご不安を抱えておられる方は非常に多いです。
中には、別居後の生活費が不安で別居に踏み切れない方もいらっしゃいます。実際に、別居後の生活費の確保は大変重要な問題です。なんの計画もなく別居をすることはお勧めできません。
他方で、このように、生活費を請求する権利があり、後にご説明するように裁判手続きも用意されています。従いまして、夫が生活費を任意に支払わないからと言って別居をあきらめる必要はありません。
まずは、ご自身の場合、別居後、どの程度の生活費がもらえるのかという計算を行い、その前提で別居後の生活が成立するか検討することが非常に重要です。計算方法等も別のコラムでご紹介しますが、大変複雑なケースもございますので、別居前に一度弁護士に、ご相談いただくのが良いと思います。
次回は、婚姻費用はいつから請求できるのかということについてご説明します。