婚姻費用調停の申立後に離婚が成立した場合の婚姻費用について
弁護士 幡野真弥
今回は、婚姻費用調停の申立後に離婚が成立した場合の婚姻費用について判断した最高裁判例をご紹介します(最高裁第一小法廷令2.1.23決定)。
■事案の概要
平成29年5月 離婚調停の申立
平成30年5月 婚姻費用分担請求調停の申立
平成30年7月 離婚成立(清算条項はなし)、婚姻費用調停は審判に移行
離婚成立により、過去の婚姻費用が請求できるかが問題になりました。
■最高裁の判断
離婚が成立した場合、離婚成立時までの過去の婚姻費用分担請求権が当然に消滅するか否か,従前から学説や下級審裁判が分かれている状況にありました。
最高裁は、この点について、「婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない」と判断しました。
その理由として、①離婚によって、婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在しないこと,②家庭裁判所は離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解されることを挙げています。
離婚の際には、財産分与や過去の未払い婚姻費用についても取り決めて置くことが多いですが、特別の理由があれば、離婚だけを成立させることもありえます。今回の最高裁判例は、そのような場合の婚姻費用の処理について参考になるものと思います。