妻の稼働能力が存在するとはいえないと判断した裁判例
弁護士 幡野真弥
大阪高裁平成20年10月8日決定(家月 61巻4号98頁)をご紹介します。
妻が夫に対し、婚姻費用を請求した事件です。
妻は無職でしたが、夫は、妻には就業が可能であるので、少なくとも年収125万円程度の潜在的稼働能力があるものとして扱うべきである旨を主張していました。
裁判所は「潜在的稼働能力を判断するには,母親の就労歴や健康状態,子の年齢やその健康状態など諸般の事情を総合的に検討すべきところ,本件では,相手方(妻)は過去に就労歴はあるものの,婚姻してからは主婦専業であった者で,別居してからの期間は短いうえ,子らを幼稚園,保育園に預けるに至ったとはいえ,その送迎があり,子らの年齢が幼いこともあって,いつ病気,事故等の予測できない事態が発生するかも知れず,就職のための時間的余裕は必ずしも確保されているとはいい難く,現時点で相手方に稼働能力が存在することを前提とすべきとの抗告人(夫)の主張は採用できない。」と判断しました。