コラム

財産分与

保険事故によって支払われた保険金と財産分与

弁護士 長島功

 保険事故、典型的には交通事故により保険金が支払われたような場合、この保険金は財産分与の対象になるのでしょうか。支払われた保険金は事故によるもので、夫婦が協力して築いた財産とはいえないようにも思えますが、法的にはどう扱われるかについて説明していこうと思います。

 結論から言いますと、保険金の中身如何ということになります。交通事故の保険金といっても、その内容は様々で、大きくは積極的な損害・消極的な損害・慰謝料があります。
 まず慰謝料ですが、これはまさに被害を被った者の精神的苦痛ですから、特有財産となり、これは財産分与の対象にはなりません。
 これに対し、事故により支出した積極的な損害を補填するもの(治療費や通院交通費等)は、共有財産となるべきものから支出していたのであれば共有財産となり、特有財産から支出していたのであれば共有財産ではないと考えられます。
 また、事故がなければ得られるはずだった消極的な損害を補填するもの(休業損害や逸失利益)については、他方配偶者の寄与が認められる限り共有財産となると考えられます。

 大阪高裁決定平成17年6月9日も、逸失利益については配偶者の寄与があることを認定した上で、症状固定時から離婚調停成立日の前日までの分について、財産分与の対象となることを認めました(このケースは、調停で離婚は成立したものの、財産分与について合意に至らず、離婚後に財産分与の支払いを求めて審判申立てがなされた事案です)。