別居の主な原因が妻の不貞行為にある場合には、婚姻費用として、自身の生活費に当たる部分を夫に対して請求することは権利の濫用として許されないとした裁判例
弁護士 幡野真弥
東京家裁平成20年 7月31日審判(家月 61巻2号257頁)をご紹介します。
申立人(妻)が子を連れて別居し、相手方(夫)に対し、婚姻費用の分担を請求しました。
審判で、相手方(夫)は、申立人(妻)の不貞行為を主張していましたが、申立人(妻)はこれを否認していました。
裁判所は、
・申立人が男性の肩に手を回して抱き合うポーズをとっているものやキスを交わしているプリクラがあること
・申立人は、別居後、男性が賃借しているアパートで暮らすようになったこと
・申立人は自分の衣類ばかりでなく男性の衣類も一緒に洗濯して上記アパートのベランダに干していたこと
といった事情の存在から、不貞行為の存在を認め、「別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというべきところ,申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって,このような場合にあっては,申立人は,自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である。」と判断しました。