コラム

養育費 裁判例 婚姻費用分担金

潜在的稼働能力を前提とする得べかりし収入に基づき養育費を算定した裁判例

弁護士 幡野真弥

 福岡家裁平成18年 1月18日審判(家裁月報 58巻8号80頁)をご紹介します。
 養育費の支払いを命じる審判が確定した後、給与の差押えを受けた申立人が、勤務先を退職し、養育費の支払免除を求めて調停を申し立て、審判に移行した事案です。

 申立人は、勤務先を退職し、収入が無くなったのであるから、養育料について免除されるべきであると主張していました。
 裁判所は「申立人は、前件審判時から、強制執行を受けた場合には勤務先を退職して抵抗する旨の意向を有していたところ、現に強制執行を受け、裁判所により強制的に支払わされることに納得できなかったために、勤務先を退職したのであり、稼動能力は有していると認められる。そもそも、未成年者らの実父である申立人は、未成年者らを扶養し、未成年者らを監護する相手方に対し養育料を支払うべき義務があるところ、前件審判において、養育料の支払を命ぜられたにもかかわらず、一度も任意に履行せず、強制執行を受けるやそれを免れるために勤務先を退職したのであるから、申立人が現在収入を得ていないことを前提として養育料を免除するのは相当ではなく、申立人が潜在的稼動能力を有していることを前提として、勤務を続けていれば得べかりし収入に基づき、養育料を算定するのが相当である。」と判断し、申立人の総収入について、勤務先を退職していなかった場合に得べかりし収入(年額467万1931円)に基づき算定すべきとしました。