子ども手当(現・児童手当)について、収入認定されないとした裁判例
弁護士 幡野真弥
養育費や婚姻費用を計算するにあたって、父母が得ている子ども手当(現・児童手当)は収入とは算定されないと判断した裁判例(福岡高裁那覇支部平成22年 9月29日決定(家月 63巻7号106頁))をご紹介します。
同決定では「抗告人は,相手方が長男に係る子ども手当(略)を受給しているから,これを相手方の収入に含めるべきであると主張する。子ども手当制度は,次代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するとの観点から実施されるものであるから,夫婦間の協力,扶助義務に基礎を置く婚姻費用の分担の範囲に直ちに影響を与えるものではない。」と判断しました。
なお、同決定では、公立高等学校の授業料が無償化されたことについても、「公立高等学校の授業料はそれほど高額ではなく,長女の教育費ひいては相手方の生活費全体に占める割合もさほど高くはないものと推察されるから,授業料の無償化は,抗告人が負担すべき婚姻費用の額を減額させるほどの影響を及ぼすものではない。
また,これらの公的扶助等は私的扶助を補助する性質のものであるから,この観点からも婚姻費用の額を定めるにあたって考慮すべきものではない。」と判断しています。
同決定の許可抗告審で、最高裁は「本件事実関係の下において,子ども手当の支給及び公立高等学校に係る授業料の不徴収が婚姻費用分担額に影響しないとした原審の判断は,十分合理性があり,是認することができる。」と判断しています(平成23年 3月17日決定)。
なお同様の裁判例として、東京家裁平成27年6月17日審判(判例タイムズ1424号346頁)があります。