コラム

離婚訴訟 裁判例 有責配偶者

有責配偶者からの離婚請求(最高裁平成元年3月28日判決)

弁護士 幡野真弥

 最高裁平成元年 3月28日判決をご紹介します。

 事案は以下のとおりです。
(・夫(大正15年5月生)と妻(昭和3年1月生)は、昭和27、8年ころから同棲関係に入り、昭和30年4月5日婚姻の届出をし4人の子をもうけた。
・夫が昭和40年ころ市役所に採用されたため、一家は昭和41年ころ東京都内から同市に転居して、借家で居住するに至ったが、夫は、昭和44年ころ、表向きは借家が手狭であることを理由に、内心は妻との共同生活からの逃避を兼ねて、付近にアパートの一室を借り、同所で寝泊りをするようになり、その頃から両者間の性交渉が途絶えた。
・夫は、昭和49年ころ、勤務先の部下であった女性とその夫が居宅を新築したことから、同人ら所有の旧居宅を借り受け、妻子とともに同所に転居し、妻との共同生活に復帰した。もっとも、夫は、間もなく庭にプレハブの小屋を建て、自分はそこで寝泊りをするようになった。
・上記の部下の女性は昭和51年に夫と離婚したが、その後同女と夫は性関係を結ぶようになった。そして、昭和53年には、夫は、同女への接近と妻からの逃避を兼ねて、前記新築の同女方の一間を賃借し、同所で生活するようになったが、昭和56年以降夫と同女との関係が深まり、同棲関係と見うる状態になった。

 夫60歳、妻57歳で、同居期間22年、四人の子女(未成熟子なし)の夫婦において、夫が他の女性と同棲するために別居して8年余りになるという事案ですが、最高裁は、この事例では、夫婦の別居期間が双方の年齢及び同居期間と対比して相当の長期間に及ぶということができないとしました。