夫が妻に無断で離婚届を提出し、別の女性と婚姻届を提出していた事案の裁判例
弁護士 幡野真弥
夫婦の一方が、他方に無断で離婚届を提出して受理されたとしても、離婚はあとから無効になり、また、慰謝料が発生する原因にもなります。
東京地裁令和元年6月26日判決は、夫が妻に無断で離婚届を提出し、新たに別の女性と婚姻届を提出した事案です。
裁判所は、「被告は原告に無断で本件離婚及び本件婚姻の届出を行ったものであるところ,婚姻及び協議上の離婚についてはいずれも婚姻ないし離婚意思を有することを前提に,当事者双方が署名した書面によって届け出ることが必要とされていること(民法739条2項,764条)を踏まえれば,本件離婚及び本件婚姻は,いずれも離婚及び婚姻についての原告の意思決定の自由を不当に侵害するものであり,不法行為に該当するというべきである。」「被告の行為のうち本件離婚及び本件婚姻の届出をしたことは,原告に対する不法行為に該当するというべきところ,原告と被告の婚姻期間が長期間であること,他方でその後婚姻無効及び離婚無効の訴えにより,本件離婚及び本件婚姻によって作出された虚偽の事実は解消されたことなど本件に顕れた一切の事情を考慮すると,原告の精神的苦痛に対する慰謝料としては30万円が相当であり,弁護士費用としてはその1割である3万円をもって相当と認める。」と判断しました。