夫の両親が夫婦のために夫婦名義で形成した財産があることを考慮して財産分与の額及び方法を定めた裁判例
弁護士 幡野真弥
東京高裁令和3年12月24日決定をご紹介します。
離婚後、元妻Xが、元夫Yに対して財産分与を求める調停を申し立て、審判となりました。
Yの父が代表を務めるA社、母が代表を務めるB社があり、Xは数年間をA社の従業員として働き、またA社及びB社の取締役として登記されていたもので、Xに給与等の名目で支払われていた収入等は父が管理するX名義の預金とされていました。このX名義の預金やY名義の複数の不動産について、財産分与の対象となるかが争いとなりました。
東京高裁は、X名義の預金中にXの稼働実態がないのに支払われた取締役報酬が含まれていたとしても、Yの父母が夫婦の生活支援としてX名義の口座に入金していたものといえるから、預金は夫婦共有財産として財産分与の対象財産と認められると判断しました。
その一方で、預金のほかY名義の複数の不動産は、父母が夫婦を支援するという目的をもって夫婦名義で取得した財産が相当額含まれており、こうした財産のすべてが夫婦の協力によって得たものとはいい難いとして、以上のような事情を上記「一切の事情」として考慮するのが財産分与における当事者の衡平を図る上で必要かつ合理的であると判断しました。
夫婦の一方の父母から支援を受けて、夫婦名義の資産が形成されている場合の財産分与について、参考になる裁判例です。