コラム

離婚訴訟 裁判例 慰謝料

夫(被告)の暴力等や自分勝手な行動によって婚姻関係が破綻したとして、慰謝料300万円をみとめた裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成15年10月23日判決をご紹介します。
 妻が夫に対し、離婚、慰謝料、財産分与を求めた事件です。
 
 被告は、結婚当初から、原告が自分の意向に従わないなどのささいなことでに苛立ち、原告に暴力をふるうことが多く、そのため原告が身体にあざを作っていることなどは珍しくなく、時にはどんぶりを投げつけられて、額を5針ないし6針縫うような傷害を受けたこともあったこと、被告は、飲酒して帰宅することが多く、泥酔したときは、理由もなく暴れ、原告に暴力をふるい、性的関係を強要するなどしたため、原告は、このような被告の態度に恐怖心を抱いてきたこと等の事実が認められました。
 裁判所は「原告は、長年にわたり、ささいなことで被告に暴力をふるわれるなどの被告の横暴な態度に耐え、特に飲酒の上での問題行動や暴力には恐怖心を持ちながらも、家庭の円満を保つために努力とがまんを重ねてきたが、ついにがまんの限界に達し、強く離婚を望むに至っている」と認定し、「被告には、自己の態度を反省し、原告の気持を理解しようとする姿勢すらみられないのであって、その態度は、あまりに自分本位なものといわざるを得ない。被告が原告の気持を理解し、その行動を改めることに期待を持つことは困難であって、このことをも考慮すると、原告と被告との婚姻関係は、被告の暴力や横暴で自分勝手な行動によって、破綻したものといわざるを得ない。」として離婚を認めました。
 
 慰謝料については、「被告の暴力や横暴な行動によって、原告と被告との婚姻関係は破綻したものであり、被告は、長年にわたり、ささいなことから原告に対する暴力を繰り返し、特に泥酔して帰宅したときのそれは、原告に恐怖を与えるほどのものであったこと、成人した二人の子どものいずれもが被告の原告に対する暴力に心を痛め、原告を助けたいという気持を持っていることなどを考慮すると、原告が受けた精神的苦痛は決して小さいものではなかったと認めることができる。」としつつも、「被告が平静なときは、原告と被告とは、共に散歩を楽しみ、国内外の旅行に行くなどしてきたこと、被告は、家族からも尊敬されるような仕事をこなし、十分な収入を得て、家族の生活を支えてきたことなどの事実も認められ、これらの事実にかんがみると、原告の婚姻生活が苦痛のみに満ちたものであったとは認め難く、原告は、被告の上記のような行動に耐える一方で、被告と円満で、平静な時間も長く共有してきたことは否定できない。」として、慰謝料の額は300万円と認めました。