被告の不合理な弁解
弁護士 幡野真弥
東京地裁平成30年 5月11日判決をご紹介します。
原告(妻)が、夫であるAと被告が不貞行為を行ったとして、慰謝料を請求した事案です。
裁判となる前の交渉段階で、被告は不貞の事実を否定していました。
裁判で、被告側は、「当初不貞を否認していたものの、これはAが被告に指示して行ったもの」「被告は、若年で社会人経験もなく、Aから聞かされた状況と異なっていることについてはAに頼るしかない状況であったこともやむを得ない」「被告は、Aの説明を受けて夫婦関係破綻の事実を信じ、Aの指示のもとに原告の請求に対抗したに過ぎないものであるから、被告の違法性は極めて低いものといわざるを得ない。」と主張しました。
裁判所は、このような被告の弁解に対して「被告は、Aを信じてAの指示のもとに原告の請求に対抗したに過ぎないから被告の違法性は極めて低いなどと強弁するが、虚偽回答をするというAの指示を受け容れるという判断をしたのは被告自身であるし、そもそも嘘をついてはならないことはごく基本的な常識であり、まして,原告の代理人弁護士からの通知に対して自らも代理人弁護士を選任して行う回答において、真実と異なることを知りながら敢えて虚偽の事実を主張することの重大性が分からないというようでは社会人としての一般常識に欠けるというほかないのであって,被告主張の上記事情は,これが防御として相当な範囲を逸脱した場合等に慰謝料を増額する事情になることはあっても,減額する事情には到底なり得ない。」などと厳しく指摘し、慰謝料として170万円を認めました。