監護者と婚姻関係破綻の有責性
弁護士 長島功
婚姻関係破綻に関する有責性がある場合、典型的には不貞行為があるようなケースでは、その有責性を監護者の適格性判断に結び付け、監護者として不適格であるとの主張がなされることがあります。
しかし、監護者指定の判断にあたって、有責性そのものは考慮されていないのが実務と考えられます。
不貞行為があった場合を例に挙げると、不貞行為という非難されるべき行為故に、監護者として不適格ということには必ずしもならず、その有責性が、実際の子の監護にどのような影響を与えたかを具体的に主張立証して、初めて両者は関連すると考えられます。
大阪高裁決定平成28年8月31日も、主たる監護者の母親が不貞行為のために夜間外出していたようなケースで、その行為自体は不適切としながらも、その「不適切な行為が未成年者らの監護に具体的にどのような悪影響ないし問題を生じさせたのかは明らかではない」とし、「不適切な行為があったからといって、これのみで抗告人(母親)による監護が将来的にも適切さを欠くとし、未成年者らを主たる監護者である抗告人から引き離し、相手方の単独監護に委ねるのは、子の福祉の点からは十分な検討を経たものとはいえない」として、原審への差し戻しをしています。
このように、仮に当事者の一方に有責性がある場合でも、監護者指定の場面では、それが具体的にどう子の監護に影響したのか、というところまで落とし込んだ主張立証が必要といえます。