住宅ローン、管理費、修繕積立金と婚姻費用
弁護士 幡野真弥
同居していた夫婦が別居することとなり、夫が家を出て行ってアパートを借り、妻が夫名義の自宅に居住し、夫が住宅ローンの支払いを続けるということがあります。
このような別居の形となると、夫は自身が居住するアパートの賃料の支払いと、妻が住む自宅の住宅ローンの支払いをすることとなり、過酷な状況となります。そこで、一定の場合には、婚姻費用の算定にあたって、夫が住宅ローンを支払うことにより妻が住居関係費用の負担を免れていることを考慮して、その分が婚姻費用が減額されることがあります(もっとも、別居にあたって夫の帰責性が大きい場合には、考慮されないことがあります)。
住宅ローン以外に、夫が、修繕積立金と管理費用を負担していることがあり、この負担も小さいものではありません。修繕積立金や管理費用と、婚姻費用の関係について判断した東京高裁令和 2年 6月30日決定をご紹介します。この決定では「相手方は,抗告人,長男及び二男が居住している自宅マンションの住宅ローン及び管理費・修繕積立金を支払っているが,住宅ローンの返済及び修繕積立金の支払は,財産形成のための支出であり,財産分与において清算すべきであること,相手方が自宅を出て抗告人と別居するに至ったことについては,長女に対するわいせつ行為に及んだ相手方に専ら責任があるというべきであること(中略),他方,管理費(月額約1万8000円)は,財産形成に資する面と住居費に相当する面があることを勘案して,本件では,住居関係費として1万円を相手方の婚姻費用分担額から控除するのが相当である。」と判断し、住宅ローンの返済と修繕積立金については、婚姻費用で考慮しなかったものの、管理費については住居費としての性質を認め、婚姻費用の算定にあたって考慮しました。