コラム

養育費

養育費はいつまで遡って貰えるか

弁護士 長島功

 離婚時に養育費をいつから支払うかについて合意ができていれば、問題はありません。ただ、親権者だけ決め、取り急ぎ離婚はしたものの、養育費については話し合いがなされていなかったことから、離婚後に養育費の請求をするという方も多いかと思います。
 また、離婚だけではなく、婚姻関係にない当事者間の子の場合は、認知を経て養育費の取り決めがなされます。
 そこで、これらの場合に養育費がどこまで遡って支払ってもらえるのかについて解説していこうと思います。

1 離婚の案件について
 婚姻費用と同様に、請求時からとされることが実務上は多いと思われます。調停申立てをする以前にも、請求をしていたことを立証できるのであれば、その時点まで遡ることも可能です。
 ただし、ケースによって修正されることがあり、なぜ養育費が支払われてこなかったのかや、双方の財産状況などに照らして、公平性の観点から請求以前に遡って支払が命じられるケースもあります。請求以前に遡って支払を命じられても酷といえない程の収入が義務者にあったり、請求を妨害するようなことを義務者が行っているようなケースでは、形式的に請求時からとはならない可能性もあります。

2 認知の案件について
 婚姻関係にない男女間の場合、法的には認知を経なければ扶養義務が生じないため、養育費の請求の前に認知の手続を行う必要があります。
 そして、認知の効果を定めた民法784条に遡及効、つまり出生時に遡ってその効果が生じると定められていることから、出生時に遡って養育費の支払いは認められることが多いです。
 しかしながら、中には出産後、何らかの事情で認知の請求を長期間していないケースもあり、かなり時間が経過した後に認知の手続と養育費の請求をする場合もあります。
 この場合にも、出生時に遡って養育費の支払いが必要となると、支払う側に過酷な結果となる場合もあります。そのため、こういったケースでは出生時に遡らず、請求時からとされる可能性もあります。

 このように、養育費の始期の問題は、実務上、基本的な基準はあるものの、何が公平かという視点から、ケースによって柔軟に調整がなされています。