コラム

離婚訴訟 離婚原因 裁判例 有責配偶者

不貞行為の宥恕

弁護士 長島功

 不貞行為は、婚姻関係破綻の主たる原因とされやすいため、不貞行為に及んだ者は、原則として有責配偶者となることはよく知られているところです。
 ただ、その不貞行為を他方配偶者が宥恕、つまり許した場合、それは法的にどのような意味をもつのでしょうか。

 この点に関して判断したものとして、東京高裁平成4年12月24日の事案があります。
 この事案では、妻が不貞行為を謝罪し、夫も妻の謝罪を受け入れ不貞行為を許し、夫婦生活も一旦は元に戻りました。しかし夫は、妻がまだ、不貞相手と関係しているのではないかと疑うようになり、妻に対し、一生束縛してやる等と責め続けたことから、妻が夫を生理的に受け入れられなくなり、家を出てしまったというものです。
 これについて、裁判所は、不貞行為を一旦宥恕した場合、過去の不貞行為を理由に有責配偶者の主張をすることは信義則上許されないとして、妻の離婚請求を認めました。

 ただ、宥恕と捉えられる発言があったからといって、常に上記のような判断がなされる訳ではありません。形式的に宥恕するような発言があっても、真意によるものではなく、夫婦関係が結局元に戻ることができなかったようなケースでは、もちろん、不貞行為が婚姻関係破綻の原因とされてしまいます。
 結局のところ、不貞行為を宥恕した際の状況や、宥恕後の夫婦関係、別居をするに至った原因などから、婚姻関係破綻の主たる原因が何だったかという視点で、総合的に判断されるものと思われます。