婚姻費用分担請求について㉘~婚姻費用分担金と離婚(1)~
弁護士 小島梓
状況によっては、婚姻費用分担金と離婚が密接に関係してくるケースがあります。離婚をしないままに、別居状態となるのが典型的なケースです。
具体的にどういうことなのか、今回は、まず、婚姻費用分担金と別居について簡単にご説明します。
「婚姻費用分担請求について②~婚姻費用(生活費)分担義務の根拠~」にてご説明した通り、基本的に、夫婦の一方が分担義務を果たさないときに、問題が顕在化しますので、基本的に同居中に問題となることはなく、通常は、離婚をしないまま、別居状態となった後に問題となります。離婚をしないまま、別居状態に入る場合は色々と考えられますが、多いのは、諸事情から離婚につき合意に至らず、他方の配偶者が自宅を出て、離婚成立までの間、別居状態で協議を続けるというパターンかと思います。
このようなケースでは、婚姻費用分担金がいくらくらいになるかを、別居状態になる前に確認しておくことが非常に重要です。特に要注意なのは、妻は専業主婦で、同居中は基本的に夫の収入で生活をしていたが、妻が子供を連れて自宅を出て別居しようかどうしようかという状況になっている場合です。
妻としては、自宅を出た後に、いくらくらい婚姻費用分担金がもらえるかによって、別居後の生活設計が大きく変わってきます。妻と子供達だけで生活するマンションを借りて、生活をすることができるのか、それは難しいので、実家に帰ることを検討すべきなのかといった感じです。
このようなケースでは、経験上、基本的に、別居後の経済状態が同居時より良くなることはありません。さらに申し上げれば、同居時と同じ生活レベルを維持することも難しいです。妻がすぐに働き始めて自分で生活費を稼げるようになるのであれば別ですが、諸事情から働くのが難しかったり、働けるとしてもパート程度の収入しか得られなかったりしますと、大抵は同居時の生活レベルから大幅に下げる必要があるケースが多いです。
婚姻費用分担金がもらえるという何となくのイメージ、夫との口約束でもらえると思っていた金額を前提に、別居生活を始めてみたら、夫から言われていた金額はもらえず、法的にもらえる婚姻費用分担金では全く生活費が足りないということになってしまうケースは珍しくありません。厳しい状況に変わりはないのですが、予め、わかっていれば、実家に帰るなり、経済的基盤が整うまで別居時期をずらすという対策もとれます。
以上のように、別居前には、法的に認められうる婚姻費用分担金額につき確認をした方が良い理由についてはご理解いただけたかと思います。
次回は、これが、離婚とどのようにつながっていくのかについてご説明したいと思います。