コラム

婚姻費用分担金

婚姻費用分担請求について⑳~婚姻費用分担額決定までの流れ(10)調停~

弁護士 小島梓

 今回は、双方の意見が一致して、合意でき、「調停成立」となったときの手続きや、その効果についてご説明していきます。まず、合意可能な状態となりますと、裁判所の方で調停条項といって、婚姻費用の金額等を文章にしたものに整えて、双方に対して、内容に間違いがないか確認をすることになります。

 この調停条項ですが、シンプルな内容であれば、裁判所が通常使用しているひな形があるので、それを示してもらい、確認をする程度になります。
 しかし、子供の費用などの関係で複雑な内容になる場合には、まずはその内容を希望する当事者の方で、調停条項案という形で作成して、裁判所と相手方に示すことが必要となる場合もあります。

 調停条項について、双方の確認が終了しますと、最後は、裁判官が調停室に入り、当事者の面前で調停条項を読み上げて内容に間違いないか、確認をします。
 その結果、双方、間違いないということで確認が終了しますと、当該期日に調停成立ということになります。その後、裁判所の方で、この調停条項を記載した調停調書というものが作成されます。

 この調停調書が非常に重要になります。
 この調停調書があることで仮に調停成立後に婚姻費用の支払いが滞るということになった場合でも、相手方の財産、給与等に対して差押えなどの強制執行手続きをとることで、強制的に回収することが可能となるためです。

 当事者間の口約束しかない、当事者間で作成した書面しかないということになった場合には、いきなり強制執行の手続きはとれません。結局調停を申し立てて、調停調書を作成したり、公正証書を作成するなど、強制執行手続きをとるための書面を作成する手続きをとることから始めなくてはいけません。

 このように、裁判所を利用して調停調書が作成されることによって得られる大きなメリットは、支払いが滞ったときに即強制執行手続きがとれること、その前提として、強制執行手続きがとられてしまうというプレッシャーを相手方に与えることで、事実上不払いを防ぐ効果にあると言えます。

 それでは、調停が不成立となった場合、はどうなるのでしょうか。 次回は、不成立となった場合についてご説明していきます。