婚姻費用分担請求について⑬~婚姻費用分担額決定までの流れ(3)~
弁護士 小島梓
「婚姻費用分担請求について⑫~婚姻費用分担額決定までの流れ(2)~」のコラムでは、婚姻費用分担金に関して、別居前に、一旦弁護士に相談いただきたい理由などご紹介しました。
今回は、「②別居後に本人もしくは弁護士から相手方に対して婚姻費用分担額の請求」の段階で、いざ婚姻費用分担請求を行うとなった場合に、どのような手順で行うのが適切か、ご説明します。
婚姻費用分担請求の方法、手順は、婚姻費用の始期(発生)と切っても切り離せない関係にあります。請求することによって、婚姻費用が発生するようにしなくては、意味がないためです。
現在の裁判実務上、「婚姻費用については請求時から発生する」という考え方が定着しています。詳細は、「婚姻費用分担請求について③~婚姻費用分担の始期~」をご覧ください。
そして、実務上
■婚姻費用分担調停・審判の申立
■内容証明郵便をもって婚姻費用分担の請求を行った
といういずれかの措置をとっていれば、請求したと考えられ、通常は同時点を請求時と認定してもらえます。
以上を踏まえますと、婚姻費用分担請求の適切な方法としては、
①まずは配偶者本人に生活費を請求してみる
②払ってもらえそうもない時には早めに、弁護士に相談する
③状況に応じて、自分名義もしくは弁護士名義で内容証明を出す
④それでも払われない場合には、早急に婚姻費用分担調停を申し立てる
ということになろうかと思います。
「①配偶者本人に自分で請求してみる」というだけでは、正直、後に争いになってしまったときに、この時点で婚姻費用発生とはみなしてもらえない可能性が高いです。それなのにこの過程を経る意味があるのかと疑問に思われるかもしれません。
しかし、当方の経験上、別居後、弁護士も裁判所も間に挟まず、ご本人同士のやり取りのみで、婚姻費用分担金額を決め、請求から支払いまでスムーズに行えている方々も一定数いらっしゃいます。
適正な金額の支払いが受けられる場合には、このように、ご本人同士のやり取りで完結するのが、お互いに費用負担も少ないため理想的です。また、この方法は感情的な対立も生みにくいため、支払いが滞る可能性が低い傾向にあるというメリットもあります。
しかし、やはり多くのケースでは、ご自身で相手配偶者に請求しただけでは、金額に文句を言われたり、なぜ払う必要があるのかなどと理不尽なことを言われたりして、スムーズに支払いには至りません。別居する事態にまでなっている場合、通常は夫婦間の信頼関係も壊れかけていますのでいたしかたない面はあります。
重要なのは、こうなってしまったときに、お金をかけたくないなどの理由から無理に、だらだらと本人対応を続けないということです。このような状態になってしまったときは、早急に次の一手をどうするか弁護士に相談いただきたいです。
次回は、②弁護士への相談についてご説明します。