婚姻費用分担請求について⑧~婚姻費用分担額の算定(1)~
弁護士 小島梓
婚姻費用が生活費の性格を有するものであることから、実際に使った費用を請求するものと考えておられるお客様もいらっしゃいます。過去には、裁判所でも生活費の実額を認定したうえで、婚姻費用分担額を決定する判断をしていた時代もあります。
しかし、婚姻費用は別居後の家族の生命線となる大切なものです。そのため、迅速に審理を進め、金額を決定して、支払いを始めさせるということが非常に重要です。
そこで、平成15年には、簡易迅速に算定できるようにするため、裁判所より標準算定方式とそれに基づく算定表が提案され、令和1年10月には、現在の実情に合わせて、それぞれ改定されました。
(1)標準算定方式
婚姻費用分担金の算定方式の概要は以下のとおりです。
婚姻費用支払い義務者の総収入を認定し、これから必要経費を控除して得た基礎収入額を、権利者、義務者、子供が同居していると仮定して、婚姻費用支払い義務者・権利者の指数で案分するという形で、具体的な婚姻費用を算定します。
なお、養育費も同様の方法で算定されます。
(2)算定表について
上記のように、標準算定方式が存在するとしても、都度計算をするとなると大変ということで、双方の総収入が分かればおおよその金額が分かるように、裁判所からは算定表も提案されています。
最新の算定表については「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」をご覧ください。
以上のように説明されても、抽象的でどういう仕組みなのかよくわからないと思います。そこで、次回以降は、具体的な事例を用いて、算定表の見方、実際の計算など見ていきたいと思います。