婚姻費用分担請求について⑥~婚姻関係破綻との関係~
弁護士 小島梓
夫婦が別居し、婚姻関係が破綻していると言えるような状況でも、婚姻費用分担請求は成立するのでしょうか。なお、婚姻関係破綻の有無の判断基準は、本HP裁判による離婚のページもご参照ください。
夫婦が協力関係を築ける可能性がない場合には、婚姻費用分担義務もなくなるようにも思えます。色々な見解があるところではあるのですが、現在、多くの裁判所は、
①基本的に婚姻関係が破綻していても生活保持義務としての婚姻費用分担義務がある。
②ただし、破綻ないし別居について専ら又は主として責任がある者(いわゆる有責配偶者)の分担請求は、信義則に反し許されない。
という考え方をとっています。
当方にご相談にいらっしゃるお客様の中には、妻が自分から自宅を出て行ったのだから生活費を払う必要はないと思われている方もいらっしゃいます。しかし、上記の通り、実務上は、婚姻関係が続いている以上は、婚姻費用分担義務が発生するという判断になるのが通常です。
妻が突然自宅を出て行って、やむを得ず別居生活が始まってしまったというようなケースではご不安や疑問も多いところかと思いますが婚姻費用分担義務が発生する前提で生活設計や将来的にどうするべきかを考えていただく必要があるため、一度、ご相談いただくのがよろしいと思います。
次回は、上記②の有責配偶者からの婚姻費用分担請求についてご説明します。