コラム

養育費 裁判例 婚姻費用分担金

幼児教育・保育の無償化を理由とする婚姻費用分担額減額について

弁護士 幡野真弥

 子ども・子育て支援法の改正により、幼稚園等を利用する3歳から5歳までの子ども達の利用料が無償化されることとなりました。
 そこで、婚姻費用や養育費の算定にあたって、この無償化制度が考慮されるかが問題となります。

 類似の制度である高等学校の授業料の無償化の取扱いについては、授業料無償化により権利者が監護養育している県立高校在学中の長女の年額11万8000円(月額9833円)の授業料が不要となったことを婚姻費用分担額の算定に当たり考慮すべきであるとの義務者の主張を排斥した裁判例(福岡高等裁判所那覇支部平成22年9月29日決定・家庭裁判月報63巻7号106頁)があります。
 最高裁も「授業料の不徴収が婚姻費用分担額に影響しないとした原審の判断は,十分合理性があり,是認することができる」として、福岡高裁の判断を是認しました(最高裁判所第2小法廷平成23年3月17日決定・家庭裁判月報63巻7号114頁)。

 幼稚園の無償化についても、東京高等裁判所令和元年11月12日決定は
「抗告人(夫)は,原審判が婚姻費用に加算した月額1万6000円の長女の教育費について,令和元年10月から幼児教育・保育の無償化が開始し,幼稚園についても月額2万5700円までは無償化されるから,教育費の加算に当たっては,同額を控除すべきである旨主張するが,幼児教育の無償化は,子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであり,このような公的支援は,私的な扶助を補助する性質を有するにすぎないから,上記制度の開始を理由として令和元年10月からの婚姻費用分担額を減額すべきであるとする抗告人の主張は採用できない」と判断しました。