コラム

養育費

親権者の再婚と養育費について

弁護士 幡野真弥

 親権者が子どもを連れて再婚したとしても、子どもと再婚相手との間で親子関係が当然に発生するわけではありません。そのため、親権をもたない実親は、親権者が再婚した後も、養育費の支払い義務を負います。
 再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が発生するには、親権者の再婚相手と子どもが養子縁組をすることが必要です。
 このとき、養子縁組をしても、親権をもたない実親が親ではなくなるわけではありませんので、養育費の支払い義務が消滅するわけではありません。もっとも、養親の扶養義務は、実親の扶養義務に優先すると考えられており、そのため、養子縁組がなされれば、養育費の支払いが不要となったり、養育の減額をすることができる可能性があります。他方で、再婚相手が十分に扶養義務を履行できない場合などには、実親は引き続き扶養義務を負担することになります。
 何をもって「十分に扶養義務を履行できない」といえるかどうかは、いろいろな考え方がありますが、ケース・バイ・ケースとなります。福岡高裁平成29年9月20日決定でも、「何をもって十分に扶養義務を履行することができないとするかは,生活保護法による保護の基準が一つの目安となるが,それだけでなく,子の需要,非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべきである。」と判断されています。