別居期間が7年以上に及んでいるとしても、婚姻を継続し難 い重大な事由があるとはいえないと判断された事例
弁護士 幡野真弥
不貞などの法定の離婚原因がない場合には、別居期間が長期化していることや、離婚の意思が強固であることなどの事実から、「婚姻を継続し難 い重大な事由」(民法770条1項5号)があるとして、裁判では婚姻関係は破綻していると評価され、離婚の請求が認められることが多いです。
もっとも、はっきりした離婚原因もないにも関わらず、一方的に離婚を求め、話し合いを拒否し、別居期間を長期化すれば、いずれは離婚が認められるというわけではありません。
東京高裁平成30年12月5日判決の事案では、第一審は離婚の成立を認めましたが、高裁は、以下のように判断しました。
「第1審原告は,さしたる離婚の原因となるべき事実もないのに(中略),単身赴任中に何の前触れもなく突然電話で離婚の話を切り出し,その後は第1審被告との連絡・接触を極力避け,婚姻関係についてのまともな話し合いを一度もしていない。これは,弁護士のアドバイスにより,別居を長期間継続すれば必ず裁判離婚できると考えて,話し合いを一切拒否しているものと推定される。離婚請求者側が婚姻関係維持の努力や別居中の家事専業者側への配慮を怠るという本件のような場合においては,別居期間が長期化したとしても,ただちに婚姻を継続し難い重大な事由があると判断することは困難である。」
「話し合いを拒絶する第1審原告が離婚を希望する場合には本件のような別居の事実が婚姻を継続し難い重大な事由に当たるというには無理がある。」
高裁は、さらに進めて、予備的に、仮に婚姻を継続し難い重大な事由があったとしても、「第1審原告は,婚姻関係の危機を作出したという点において,有責配偶者に準ずるような立場にあるという点も考慮すべき」とし、仮に婚姻関係が破綻していたとしても、離婚請求は信義則上認められないと判断しました。
はっきりした離婚原因がない場合、離婚を求めるためには、婚姻関係についてきちんと話し合うべきといえるでしょう。