離婚訴訟係属中の、自宅不動産の共有物分割請求について
弁護士 幡野真弥
不動産が共有名義となっている場合、一定の要件を満たせば、共有物分割請求をすることができます。分割の方法としては、現物分割、競売して代金分割、価格賠償(分割の結果、単独所有することになる共有者が、他の共有者に金銭を支払う)があります。
夫婦が離婚する際は、共有物の処分は財産分与で考慮されることとなりますが、財産分与を経ても共有名義のままとなっているために離婚後に共有物分割請求をするケースや、あるいは財産分与前(離婚前)の時点で共有物分割請求をするケースがあります。
離婚前の時点で、共有物分割請求をする場合は、共有物分割請求が権利濫用として否定されるかどうかが争点となります。
東京地裁平成29年12月6日判決は、離婚訴訟の係属中に共有物分割請求訴訟となった事案ですが、裁判所は、「先行して係属する別件訴訟の財産分与手続によらずに,本件訴訟の共有物分割手続によって本件不動産の帰すうが決せられることにより原告の受ける利益と被告の被る不利益等の客観的事情のほか,本件訴訟の共有物分割手続において本件不動産の帰すうを決することを求める原告の意図とこれを拒む被告の意図等の主観的事情を総合考慮すれば,別件訴訟において被告の離婚請求が棄却されるなど本件不動産の帰すうが財産分与手続によっては決することができないことが確定する前に,原告があえて本件不動産の共有物分割を請求することは信義則に違反し,また,権利の濫用に該当するものとして許されないというべきである。」と判断し、権利濫用として共有物分割請求を否定しました。
離婚訴訟の係属中に共有物分割請求訴訟が提起される事案は少なく、参考になる事案です。